「残業時間を減らしましょう。」
「長時間労働をなくしましょう。」
「ワークライフバランスを大切にしましょう。」
社会人として働いていると、このような言葉を耳にする機会は少なくありません。
実際、働き方を見直す動きは進んでいます。
残業時間を抑制するためのルールが作られたり、企業側にも長時間労働を減らすことが求められたりしています。
もちろん、長時間労働を減らすこと自体は、とても大切なことです。
しかし、現場で働いていると、ふと思うことがあります。
「残業時間を減らせと言われても、仕事そのものが減っていないのでは?」
ということです。
そして、仕事が減らない以上、現場はどうにかして仕事を終わらせようとします。
その結果として生まれるのが、いわゆる「グレーゾーン」なのではないでしょうか。
ルールを作っても仕事量は消えない
例えば、会社から、
「今月は残業時間を○時間以内にしてください。」
と言われたとします。
では、残業時間を減らせば仕事も自動的に減るのでしょうか。
当然、そんなことはありません。
昨日まで残業して終わらせていた仕事が、突然なくなるわけではありません。
納期が変わらない。
顧客からの依頼も減らない。
会議もある。
メールも来る。
トラブルも発生する。
それでも残業時間だけは減らさなければならない。
そうなると、現場としては別の方法を考えるしかありません。
サービス残業は「グレーゾーン」の代表例
その代表的なものが、サービス残業だと思います。
本来であれば、働いた時間に応じて適切に賃金が支払われるべきです。
しかし、
「残業時間を増やすな。」
と言われる。
でも仕事は終わらない。
そこで、
「少しくらいなら……。」
と、打刻後に仕事をしてしまう。
もちろん、これは望ましい状態ではありません。
ですが、現場に仕事が残っている以上、
「仕事を終わらせる」という目的と「残業時間を減らす」という目的が衝突してしまう。
この矛盾が、サービス残業などにつながってしまうことがあります。
「持ち帰り仕事」も同じではないか
会社に残れないのであれば、家で仕事をする。
これも、似たような問題だと思います。
会社にいる時間は短くなった。
数字上は残業時間も減った。
でも、自宅で仕事をしている。
これでは本当の意味で労働時間が減ったとは言えません。
むしろ、
「見えない労働時間」
が増えてしまっただけです。
もちろん、すべての持ち帰り仕事が悪いという話ではありません。
ただ、「残業時間を減らす」という数字だけを追いかけると、こうした見えにくい部分に仕事が移動してしまう可能性があります。
現場は「どうにかして仕事を回す」
ここが、制度を作る側と現場の大きな違いなのかもしれません。
制度を作る側からすると、
「残業時間を減らす。」
というルールを作ればいい。
しかし、現場には実際に仕事があります。
顧客がいます。
納期があります。
上司からの依頼があります。
トラブルも起きます。
だから現場は、
「どうすれば、この仕事を回せるのか。」
を考えます。
そして、ルールの範囲内で何とかできないかを考える。
場合によっては、その境界線ギリギリを歩くことになる。
これが「グレーゾーン」が生まれる理由なのではないでしょうか。
規制しても、今度は別の問題が出てくる
残業を規制すれば、長時間労働が減る。
これは理想的な話です。
しかし、現実にはそう簡単ではありません。
残業を減らした結果、仕事が翌日に持ち越される。
業務時間内に終わらない仕事が増える。
現場の負担が増える。
サービス残業が発生する。
管理職に仕事が集中する。
こうした別の問題が発生する可能性があります。
だからといって、
「残業規制なんて必要ない。」
という話でもありません。
長時間労働を放置するのも問題です。
結局、
仕事量と人員と納期と労働時間を、どうバランスさせるか。
ここが本質なのだと思います。
現場だけに解決を求めても難しい
個人的に一番難しいと思うのが、
「残業を減らしてください。」
という指示だけが現場に降りてくるケースです。
それなら、
「どの仕事をやめるのか?」
「どの仕事の納期を延ばすのか?」
「人員を増やすのか?」
「業務を効率化するのか?」
までセットで考える必要があります。
仕事量が100あるのに、
「残業は50%減らしてください。」
と言われても、仕事量がそのままなら、誰かがどこかで帳尻を合わせなければなりません。
結局、その負担を現場が背負う。
これでは、根本的な解決にはなりません。
「グレーゾーン」はなくならないのかもしれない
では、どうすればいいのでしょうか。
個人的には、この問題に完全な答えはないような気がしています。
ルールを厳しくすれば、現場は別の方法を探す。
規制を緩和すれば、今度は長時間労働が増える。
残業を減らせば、別のところに仕事が移る。
人を増やせば、人件費が増える。
効率化すれば、新しい仕事が増えることもある。
つまり、
どこかを改善すると、別のところに問題が移る。
この繰り返しなのではないでしょうか。
最後に
残業時間の抑制は、決して悪いことではありません。
むしろ、働く人の健康や生活を守るためには重要な取り組みだと思います。
ただし、
「残業時間を減らすこと」だけを目的にしてしまうと、本当の問題は解決しません。
仕事量が減らなければ、現場はどうにかして仕事を終わらせようとします。
その結果、サービス残業や持ち帰り仕事など、見えにくい労働が生まれてしまう。
制度を作ることも大切。
でも、それ以上に、
「なぜ残業が発生しているのか。」
「そもそも仕事量は適切なのか。」
「人員は足りているのか。」
「その仕事は本当に必要なのか。」
というところまで考える必要があります。
残業規制を強めても、緩めても、現場はその環境の中で仕事を回そうとする。
そして、どうにかして「グレーゾーン」を見つけてしまう。
だからこそ、この問題には終わりがないのかもしれません。
結局のところ、
残業時間という数字だけを見るのではなく、「なぜその時間まで働かなければならないのか」を考えること。
それが、本当の働き方改革なのではないでしょうか。


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